発達障害は障害という名前がついていますが、個々人の『特性』と言い換えることができるものです。そのため、特性を正しく理解し対応していくことで、本来持っている力を伸ばしていくことができるでしょう。今回は、そんな発達障害の種類、特徴、サインや症状、支援や配慮のポイント、自分自身との向き合い方についてまとめました。
■目次:
1.発達障害とは
2.発達障害の種類と特徴
3.発達障害のサインと症状、支援や配慮のポイントについて
4.自分自身の発達障害への向き合い方
1.発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳の働きの違いにより、行動や情緒面に特徴が現れている状態を意味します。
発達障害の人は『自分は周りと違った考え方や行動をする』『怒られてばかりいる』といった、悩みや生き辛さを感じていることがあります。
こうした悩み、生き辛さ、疑問などを抱えたままにしてしまうと、
・常に気持ちが落ち着かなくなってしまう
・自分に自信がもてなくなってしまう
・他者に攻撃的になってしまう
といった二次障害に発展してしまうこともあります。
そのため、発達障害に対しては、正しい理解や向き合い方を知っておくことが大切になります。
2.発達障害の種類と特徴
発達障害には、自閉症スペクトラム、注意欠陥・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)などがあります。前述の通り、これらの特性は全て『生まれつきの脳の働き方に違いがある』という共通点があります。それぞれの特性の特徴は以下の通りになります。
自閉症スペクトラムの特徴
・相手の気持ちを読み取ったり、考えたりすることが苦手
・文字や図形など特定の物事に強い関心を持っていたり、こだわりが強かったりする
・同じ行動を繰り返す
・見通しのない状況での不安が強い。やることがはっきりと分かっていたり見通しを持てたりする場合にはきっちりとしている
・大勢の人がいる場所や気温の変化により落ち着かなくなるなど、感覚刺激への敏感さを持っている
注意欠陥・多動症(ADHD)の症状
・周囲のものに次々と関心を持つ
・発達年齢に比べて落ち着きがない、じっとしていられない
・周囲のペースよりもエネルギッシュにさまざまなことに取り組む
・順番が待てない
・注意が持続しにくい、作業にミスが多い
※多動性・衝動性と不注意の両方が認められる場合と、片方のみが認められる場合があります
学習症(LD・学習障害)
・全般的な知能発達には問題がなく、話す・聞いて理解することはできる
・読む、書く、計算すると行った特定の学習が極端に苦手
発達障害は、一つの特性が顕著に現れていることもあれば、下図のように複合して表出することもあります。加えて、障害の程度や症状は、年齢や生活環境によって変容することから、多様であるといえます。
※参考:政府広報オンライン
また、発達障害の特性はあるが診断基準に満たない『グレーゾーン』と呼ばれる状態もあります。グレーゾーンは診断基準に満たないことから、逆に理解や支援が得られにくいといった悩みを抱えている場合があります。
3.発達障害のサインと症状、支援や配慮のポイントについて
前述の通り、発達障害の特徴はそれぞれ違うため表出する症状や支援・配慮のポイントも異なります。以下では、各特性に応じたサインや症状、支援や配慮のポイントについて解説します。
自閉症スペクトラム
サインや症状
★1〜2歳ごろ
・目が合わない、表情が乏しい、名前を読んでも振り向かない
・他者に関心がない、人のまねをしない
・言葉が遅い
・一人遊びが多い
・指差しをしない
・癇癪が強い
・大きな音、水中、人がたくさんいるところを嫌う
★学齢期以降
・友達ができにくい
・関わり方が一方的で友達が嫌がっていることに気づけない
★成人期以降
・仕事の優先順位をつけることが苦手
・臨機応変に対応することが難しい
・社会的なマナー、コミュニケーションなどでトラブルが多い
支援や配慮のポイント
・専門家や機関と連携し、サポートのコツを聞き、対応する
・肯定的、具体的、視覚的な伝え方を工夫する(『●●をしてはいけない』では何をして良いかわからないため『◎◎をしましょう』と肯定的に伝える。また、流れを細分化し書き表すなどする)
・感覚の過敏さがある場合には、室温や環境などに配慮する
注意欠陥・多動症(ADHD)
サインや症状
★幼児期(幼児期はADHDではない子どもとの違いが見分けにくいことがあります)
・落ち着きがなく、活発すぎる
・かんしゃくが強い
★学童期以降
・授業に集中できない
・忘れ物が多い
・時間の管理が苦手
・すぐに気が散る
★成人期以降
・ケアレスミスが多い
・締め切りや約束が守れない、忘れてしまう
・仕事の優先順位をつけられない、順序立てて仕事ができない
・集中して事務作業ができない
・片付けができない
支援や配慮のポイント
・専門家や機関と連携し、サポートのコツを聞き、対応する
・幼児期、学童期は環境を整えて課題や活動に集中できるようにする
・ダメな行動を注意するだけでなく、増やしたい行動に注目したり褒めたりする
・やることや取り組むべきことの優先順位を書き出しToDoリストを作る
学習症(LD・学習障害)
サインや症状
★幼児期
・手先が不器用
・言葉が遅れている
・数えることが困難
★学童期以降
・読むのが遅い
・読んでも内容が理解できていない
・誤字、脱字が多い
・数の概念が理解できない、計算が遅い
★成人期以降
・メモを取ることが苦手
・マニュアルを読むことが苦手
・計算が苦手なため、事務作業が難しい
支援や配慮のポイント
・専門家や機関と連携し、サポートのコツを聞き、対応する
・得意な部分を積極的に使って情報を理解したり表現したりできるようにする
・ICT機器や音声教材を活用する
・苦手な部分の活動、課題を調節する(読むことが苦手な場合大きな文字で書き表す、書くことが苦手な場合大きなマス目のノートを使うなど)
4.自分自身の発達障害への向き合い方
近年、発達障害という概念が世間に浸透してきたことで、大学生や社会人になってから『自分が発達障害である』と気付くケースも増えています。
自身に『発達障害の特性がある』と感じている方は、以下を参考にその特性や悩みに応じた仕事や環境を選択すると良いでしょう。(参考:社会福祉法人 恩賜財団 済生会)
特性、悩み | 向いている職種、環境 |
---|---|
興味・関心のある事柄に没入できる | 研究職、技術職 ・業務に没入しすぎてオーバーワークにならないよう注意 ・業務量を管理してくれる人、システムがある環境が◎ |
業務内容や手順の変化を負担に感じる | ルーチンワークの職種 ・日々の業務内容、量の変化が少ない ・淡々とコツコツと続けられる |
コミュニケーションに苦手意識がある | コミュニケーションが少ない職場 ・接客業、アットホームな雰囲気の職場は△ ・趣味の話題は仕事と切り分けて、社会人サークルなどで楽しむ |
書類の誤字・脱字などのミスが多い | 動きのある仕事、接客業 ・事務系の職種とは相性✕ (服薬によりコントロールできている場合には△) ・フットワークが軽い傾向→動きのある仕事は相性◎ |
ルーチンワークに飽きて転職を繰り返す | 外出の多い仕事、体を動かす仕事 ・外回りなど外出の多い仕事、動きのある仕事は相性◎ ・臨機応変な対応が得意な傾向→変化の多い環境と相性◎ |
■まとめ:
発達障害は生まれ持った特性です。無理して直そうとしたり、過度に欲求を抑圧したりすると、自分に自信が持てなくなる、他者に対して攻撃的になると行った二次障害に繋がってしまうことがあります。そのため、発達障害に対しては、正しい理解と向き合い方を心がけることが大切になります。
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